化学

化学者だから思いついた金メダルの隠し方

2014年7月1日 19:11

今も昔も金が貴重なものとされている理由は、見た目に美しく、量が少なく、しかも、化学的に安定しているからである。そんな「金属の王」である金を溶かすことができるのが、濃塩酸と濃硝酸とを3:1の体積比で混ぜた王水である。
ナチス政権下のドイツでは、ユダヤ人や政権に批判的な人々に対する迫害が行われていた。ノーベル物理学賞を受賞した2人の科学者もその対象になった。ジェイムス・フランクはユダヤ人だったため、マックス・フォン・ラウエは痛烈な政権批判を行ったために目をつけられたのだ。二人はノーベル財団から授与された金メダルが奪われることを恐れ、デンマークの化学者・へヴェシーにメダルを預けた。しかし、デンマークにもドイツ軍が攻めてきた。へヴェシーはスウェーデンへの脱出を決心するが、途中でドイツ軍に見つかって没収されることを恐れて、金メダルを王水に溶かし、研究室の棚にしまい込んだ。終戦後、デンマークに戻ってきたへヴェシーは、王水のビンが無事であることを確かめ、ノーベル賞委員会に事情を説明した。王水から作り直してもらった金メダルは再びフランクとラウエの手に戻った。
ノーベル賞のメダルは1980年までは純金(純度を示す表示でいうと24K)製だったが、落としただけで曲がってしまったり、傷がつきやすいということもあって、現在では18K(18÷24=75%の純度の金。他は各種金属が混合しているため丈夫)を基材として、24Kでメッキした金メダルが使用されている。重量は約200g、直径約6.6cmである。
ちなみに金が溶けた王水はただの黄色い液体であり、特別な価値があるようには見えない。
還元剤を加えることで固体の金を取り出せる。
化学式で書くと以下のようになる。
●金の溶解
王水と金が反応して一酸化窒素を発生させながらイオンを作りH[AuCl₄](塩化金酸)として黄色液体として安定する。
金Au+濃硝酸 HNO₃+濃塩酸4HCl→H[AuCl₄]+2H₂O+NO
●金の還元
還元剤に亜硫酸塩を使うと
亜硫酸塩3Na₂SO₃+H[AuCl₄]+3H₂O→3Na₂SO₄+8HCl+2Au
となり、金Auが取り出せる。

「ジェイムス・フランク」
「マックス・フォン・ラウエ」
「王水」
「王水溶解金箔 」

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