化学

ナポレオンのロシア遠征失敗はスズペストのせい

2014年10月21日 22:46

スズは美しいだけでなく、融点が低く加工しやすいという性質をもつ。そのため19世紀末にアルミニウムの量産方法が確立されるまでは、食器などの日用品に大量に使われてきた。ところが、スズには大きな欠点がある。13.2℃以下では結晶構造が変わり、灰色スズへと変化するのだ(実際には不純物が混じっているためにマイナス10℃以下から変化が進んでいくことが多い)。灰色スズは極めてもろく、わずかな衝撃で粉々に砕け散ってしまう。この現象は一部に現れ、やがて全体に広がるため、ペストにちなんでスズペストと呼ばれた。
1812年、ロシアに進撃したナポレオンは、大敗を喫した。敗因としては、戦略のまずさ、想像をはるかに超える寒さ、食糧不足などが挙げられるが、スズペストも要因のひとつといわれている。フランス軍兵士の軍服のボタンはスズ製だったため、スズペストによってボロボロになった。化学に対する知識が不足していた当時、「スズが朽ちたのはロシア軍が病原菌を撒き散らしたせい」という風評が広まり、士気は大きく低下したという。ロシアに攻め入った約60万人の兵士のうち、生き残ったのは5000人だった。もし、銀や貝のボタンを使っていれば、生き残ることができた兵士はもう少し多かったかもしれない。

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