楽校コラム

コロンブスが望遠鏡をのぞいている図はありえない。

2014年5月7日 14:31

アメリカ人にとってはコロンブスは自分たちの国を発見したヒーローである。だから
このように、コロンブスのコスチュームが仮装の定番として販売されているが、小道具として当然のように、手に望遠鏡を持っている(別売です、という説明がある)。しかし、これは実はあり得ないことなのだ。
オランダのメガネ職人、リッペルスハイが望遠鏡を発明したのが1608年。実際にはリッペルスハイは他人から望遠鏡の製作方法を聞いていたといわれ、1589年の書籍に望遠鏡の記述があることから、実際の発明はもう少し時代を遡るといわれているが、それでも1492年のことであるコロンブスのアメリカ大陸発見の航海とは100年近い開きがある。コロンブスが望遠鏡をのぞいている、というのは夏目漱石がパソコンで小説を書いている、というのと同じくらいの時代錯誤なのだ。
……しかし、望遠鏡というものが、“遠い未知の世界をのぞき見る”というイメージを持つ道具であるために、それと未知の世界に乗り出して新大陸を発見したとされるコロンブスは、絵画的には実に優れた取り合わせとなる。カリブ海にセントクリストファー・ネイビスという島国がある。1493年11月12日にコロンブスが第2回航海で発見した土地で、自身の名前(クリストファー・コロンブス)の由来となっている聖クリストフォルスの名を島に付け、その後イギリスの植民地となった。そのセントクリストファー・ネイビスで1903年、英領として初の切手 が発行された。図案に描かれたのは当然、島の名の由来にもなっているコロンブスで、このコロンブスもやはり、船の上で望遠鏡を手にしていた。
今後も、歴史事実がどうあれ、コロンブスの像は望遠鏡を手にした姿として描かれ続けるに違いない。ちなみに、セントクリストファー・ネイビスのネイビスとはセントクリストファー島と共に発見された島の名前だが、これは“雪”を意味するスペイン語、ニエベからつけられた。島で最も高い山の頂に雪が積もっていたのを見てコロンブスが名付けたのだが、実はこれは雪でなく雲だった。コロンブスの勘違いだったわけだが、彼が望遠鏡を持っていればこんな間違いもしなかったろう。

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