楽校コラム

幸運の風水で滅びた国? 西夏

2014年9月8日 18:29

西夏(せいか)、という国がかつてあった。1000年ほどむかしの中国大陸の国だ。
歴史の授業でチンギス・ハンの事績を習うとき、チンギス・ハンが生涯の最後に攻め滅ぼした国の名、として先生からその国名を聞くかもしれない。

現在の中華人民共和国の、甘粛省(かんしゅくしょう)・寧夏回族自治区(ねいかかいぞくじちく)にある銀川(ぎんせん)という街が、かつてこの西夏の首都があった街である。西夏は中国史で言うと宋の時代、1038年にチベット系民族のタングート人が宋の支配から脱し、独立した。初代皇帝となった李元昊(り げんこう)は、まずそれまで使っていた中国の文字(漢字)を廃し、西夏独自の文字を作って国民に使用させた。
独立独歩の意識のあらわれだろう(この文字については、井上靖の『敦煌』という小説にその描写がある)。

しかし、西夏の歴史は過酷なものだった。巨大な宋王朝との対立はもとより、宋と対抗するために手を結んだ隣国、遼に侵略されたり、中国大陸の北に起こった女真族(じょしんぞく)の金王朝とも対立する。そして建国から200年弱で、当時巨大な勢力で中国大陸を席巻していたモンゴル族のチンギス・ハンに攻め滅ぼされ、西夏は砂漠の中に埋もれて歴史から消えていく。独自の文字を使っていたことが災いして、その文字を解読できる人間がいなくなるとともに、西夏の歴史も忘れ去られていった。

西夏文字が再発見されるのは今から100年ほど前、ロシア人の探検家・コズロフが、悪霊の城、と呼んで現地人が恐れている廃墟(何かアドベンチャーゲームにでも出てきそうな呼び名だ)カラホトを調査して見つけた数多くの書物による。ここに、漢字とも他の文字ともまったく違った文字が書き付けられており、幻の国、西夏の歴史が再び人々の前に姿を表すこととなった。

この文字は長いこと判読不能とされてきたが、1960年代になって、日本の言語学者・西田龍雄がこの文字をほぼ完全に解読し、西夏研究に大いなる進展をもたらした。現在ではかなり詳細なところまで、西夏の人々の生活がどのようになされてきたかがわかっている。

興味深いのは、西夏は、国を建てるとき、その位置を風水の占いにより、最高の運気を引き寄せるパワーを持った土地とされる場所に都を作ったらしいことが文献によってわかったことだ。ところが、その噂を聞きつけたチンギス・ハンが、その幸運の場所をぜひ自分のものにしたくて、執拗に西夏を攻略しようとして、結果、滅亡してしまったのである。そして、この戦いでの過労から、チンギス・ハンもまた病を得て、西夏の降伏を待たずに死亡する。幸運が逆に凶運を呼び寄せてしまう。人や国の運命は、単純な占いの結果のナナメ上を行く、ということか。

「西夏」
「西夏文字」
「文字が語りかける民族意識:カラホトと西夏文字」
「西夏文字の話―シルクロードの謎」西田龍雄著
漫画「シュトヘル」
西夏国には、悪霊(シュトヘル)と恐れられる女戦士がいた。一方、モンゴルの皇子・ユルールは西夏文字に魅せられ、それを守るため一人旅に出ようとする。

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