楽校コラム

“若干”は一と十の間?

2014年12月4日 16:12

作家・野坂昭如の『とむらい師たち』という作品に、“ジャッカン”というあだ名の登場人物が出てくる。口癖が「若干(じゃっかん)」だという人物である。若干とは「少しばかり」という意味で、いささか小難しい用語。日常ではあまり使わない言葉だが、口癖がジャッカンなのは、この男が役所の戸籍係だ、という設定だからである。
今でも、アルバイト募集などの広告で「販売部・若干名」などとよく使われている。
ところで、なぜ「若干」で「少しばかり」という意味になるのだろう。「若」の字は、ここでは「わかい」という意味でなく、「若し(ごとし。……のようだ、の意)」という方の意味である。つまり「“干”のようだ」である。……まだよくわからない。
“干”という字は“干拓”“干天”などの熟語に使われていることでもわかるが、“干す”という意味。少しばかりという意味などはまったくない。しかし、文字を見てもらうとわかるが、この字は“一”と“十”という、ふたつの数字の組み合わせで書かれる。
これは漢字の、いわゆる言葉遊びで、“一の若く、十の若く(一のようだが十でもある)”という意味を表しているのだ。一ほど少なくもなく、十ほど多くもない、つまりは「少しばかり」の意味。くだらない字遊びだ、と思われるかもしれないが、今から2500年ほど前、中国古代の思想書『墨子』に、すでに用例がある使い方なのである。

『語源由来辞典』
http://gogen-allguide.com/si/jyakkan.html

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