楽校コラム

中国代表料理のひとつを作った詩人がいる

2014年12月4日 16:14

蘇東坡(そとうば、あるいは蘇軾(そしき))は今から900年ほど前、北宋時代の人である。詩人、書家として中国史を代表する人物だが、本業は政治家で、自身の政治信念に忠実であったことから、権力者に嫌われるなど、当時の政治状況に翻弄され、何度も左遷され、晩年は海南島に左遷されて、許されて都に戻る途中で死んだ。そういう意味では悲運の人、だった。
しかし、現在まで残る蘇東坡の文章は力強く、またユーモアにあふれ、とてもそのような悲運にもてあそばれた人物とは思えない。よほど精神力が強く、自分の運命をも客観的に見る能力が備わっていたのだろう。
そして、彼はまた、食いしん坊でもあったようだ。
例えば中華料理の豪華コースで出てくる鯉の揚げ煮などは蘇東坡の考案した料理だと言われているし、他に中華スープなども多く作っている。……だが、やはり蘇東坡の料理で最も有名なのは“東坡肉”だろう。日本語読みで「とうばにく」、中国語では「トンポーロー」という。

湖北省黄州に左遷させられたとき、彼はこの土地の豚肉(中国では猪肉という)が、安くて大変おいしいことに気がついた。だが、金持ちは豚肉を低級な食い物としてバカにしていたし、貧しい者たちはうまい食べ方を知らない。そこで蘇東坡は、この豚肉をかたまりのまま、弱火でとろとろと煮る料理法を考え出し、そのレシピを詩に作った。『食猪肉(豚肉を食べる)』という、そのものズバリの題名である。

  黄州好猪肉    黄州の豚肉はおいしい
  價賤等糞土    値段は安くゴミみたいなもの
  富者不肯喫    金持ちは食べようともせず
  貧者不解煮    貧乏人は料理法を知らない
  慢著火 少著水  まず火をつけて 少し水にひたし
  火候足時他自美  火が十分通ればそれだけでうまい
  毎日起来打一碗  毎朝一皿作っている
  飽得自家君莫管  自分が満足すれば他人がどう言おうとかまわない

この東坡肉は、上海蟹の蒸し物や北京ダックなどと並ぶ中国の代表料理であり、日本の豚の角煮の原型とも言われている。現代でも料理好きな文化人やタレントが多いが、蘇東坡はその元祖とも言えるだろう。

『漢詩 食緒肉』
http://www.k2.dion.ne.jp/~osafune/kansi/nikuwokurau/kurau.htm

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