楽校コラム

葬式のとき、おにぎりを投げる風習の地方がある

2014年12月4日 16:18

世界には、さまざまな葬式の形がある。中国の一部地域では葬式のとき、集まった人々がみんなで麻雀をするし、ハワイの葬式は喪服ではなく、着飾った晴れ着でにぎやかに執り行う。
日本も、かつては各地方で独特の型の葬式があったとされるが、明治時代に、蕃習(未開の風習)を取り締まるという名目でかなりの特色ある葬式が廃止され、伝統が途絶えてしまった。
とはいえ、地方に行くとまだまだ、東京や大阪などの大都市では見られない、ユニークな葬式が残っている。北海道では葬式の時に御棺の前で集合写真を撮影する地域があるし、東北では葬式を結婚式のようにホテルのホールでする地方がある。石川県では少し以前まで、中国や韓国のような、泣き女(葬儀の最中、哀しみを表す為に大声で泣きわめく職業)があったという。
なかでもユニークなのは淡路島で、三十五日の法要の前に出席者たちが山の麓に向かって、後ろ向きでおにぎりを放り投げる、というものだ。これは団子ころがしという、各地に伝わる風習が変化したものだそうで、これは人間があの世へ旅立つのを邪魔する悪い鬼の気を散らすため、山の上から団子を転がし、鬼がその団子を食べている間に死者にあの世へ急いでもらおう、というものだそうだ。この際には投げる者は後ろを振り返ってはならないと言われているという。淡路島の風習は、この団子の代わりにおにぎりを使うものである。
淡路島と言えば、古事記や日本書紀に、イザナギとイザナミが国生みの儀式を行ったときに、最初に生んだ島とされている。そして、イザナギとイザナミの神話と言えば、連想するのが黄泉の国の泉津醜女(よもつしこめ)という女性の鬼である。
死んで黄泉の国に行ってしまったイザナミを迎えにイザナギがやってくるが、そこでイザナギが見たのはワニのような怪物になってしまったイザナミの姿だった。驚きと恐ろしさで逃げ出したイザナギを、イザナミの命令で追ってきたのが、このヨモツシコメであった。凄まじい勢いで追ってくるこの鬼をまく為に、イザナギはまず、頭に飾り代わりに乗せていた蔦葛を投げ捨てる。……すると、その蔦葛はみるみるブドウに変わった。ヨモツシコメはそのブドウの実を貪り食いはじめ、そのすきにイザナギは遠くへ逃げられた。……しかし、ブドウを食い終わったヨモツシコメはなおも追ってくる。今度はイザナギは竹の櫛を投げる。櫛はみるみるタケノコに代わり、ヨモツシコメはそのタケノコにむしゃぶりついて食べ始め、ついにその追跡を振り切ったという。
団子ころがし、またはおにぎり投げが、この神話を元にしていることはまちがいないだろう。やはり淡路島は、日本の神話時代の風習が残っている地方なのだ。

『おにぎりを投げる!?淡路島、独特の葬儀の風習』
http://www.osohshiki.jp/column/article/24/

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