楽校コラム

フグ自体は毒を産出しない

2014年12月4日 16:25

「河豚(フグ)は食いたし命は惜しし」という諺があるくらい、日本人はその猛毒にびくびくしながらフグを賞味してきた。現在では、フグの調理には免許が必要で、毒のある肝臓や卵巣を注意深く取り除き、かつ、その取り除いた部分の処理には厳重な規則がある。

しかし、フグはまた、日本の各地の貝塚から多くその骨が発見されている魚でもある。
泳ぐのがそんなに早くないから、古代人にも捕まえやすかったのだろう。不思議なのは、古代から、この猛毒の魚であるフグを食べてきたのは、どうも日本人だけであるということだ(中国の一部でも食べられていたが、全土に広まってはいない)。毒に関しての知識が乏しく、また当然のことながら調理師免許制度なども無かった時代、フグを食べて死ぬ人々は出なかったのだろうか。

毒物学の権威であり『毒の文化史』などの著書がある薬学博士・山崎幹夫氏は、「縄文時代の日本のフグは毒を持っていなかったのではないか」という大胆な仮説を発表している。なぜかというと、フグの毒というのは、もともと、フグ自身が作り出して体内に持っているものではないからである。

蛇の毒やサソリの毒は、その動物が自分の体の中で生成し、分泌する。だが、フグの毒はそうではない。フグの毒素として知られるテトロドトキシンは、最初はある種のバクテリアが持っていたもので、それをプランクトンが食べ、そのプランクトンを貝や甲殻類が食べ、それをフグが食べ、そしてフグがそのテトロドトキシンを肝臓や卵巣にため込んで、そのフグを食べた人間が、この毒はフグの毒である、と認識したのではないかというのである。いわば食物連鎖の結果というわけだ。

この仮説はまだ証明されたわけではないが、しかし、たまたま、古代において日本周辺の海域のプランクトンが毒を持たないもので、それを食べた貝や甲殻類も毒を持たず、もちろんそれを食べたフグにも毒が蓄積されなかった、という一時期があったのかもしれない。であれば、いくらでも他に安全な食糧があったにも関わらず、縄文人が貝塚から大量に骨が出るほどフグを食べていた理由に説明がつくというものである。

なお、現在、養殖のふぐを食べさせるチェーン店などが増えているが、ここのフグたちは、タマゴから孵った時から、無毒のエサで育てられているものが多い。だから、こういう店ではフグの肝なども安心して食べられるといわれている。ただ、養殖であってもフグ毒のあるといわれている部位は法律で提供することは禁止されているから注意するように。また、日本の能登地方などでは、フグの卵巣を2年以上にもわたって塩漬けおよび糠漬けにする事で、毒抜きをし、名物の食べ物にしている。人間の旺盛な食欲にはフグもかなわない、というところか。

『縄文時代、フグは無毒だった!?』
http://www.athome-academy.jp/archive/biology/0000000272_all.html

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