楽校コラム

“ホームベース”も“トップバッター”も“フォアボール”も“デッドボール”も英語では通じない

2014年12月22日 19:51

太平洋戦争中の日本は、英語を敵国の言語(敵性語)とみなして使用を禁止していた。野球も例外ではなく、用語を日本語に置き換えるよう指示があった。ストライクは「よし」、ボールは「悪球」、セーフは「安全」、アウトは「無為」などとされていたが、どこまで実際に使われていたかは疑問視する説もある。面白いのは「三振」は別に英語ではないのに「それまで」に言い換えるよう指示されていたことだ。
確かに、これくらいならまだいいが、もともとアメリカから伝わったゲームである野球の用語を全て日本語に置き換えるのは不可能だ。「ノーヒットノーラン」や「セーフティーバント」、「ランニングホームラン」をどう日本語にしたらいいのだろう……と言う人がいたが、実はこの三つは、例えアメリカ人が聞いても、英語とわからないのではないかと思う。なぜなら、どちらも日本で作られた用語で、アメリカの野球ではこうは呼ばないからだ。
アメリカでは「ノーヒットノーラン」は「no hitter」または「no-no」と言う。「セーフティーバント」は「bunt for a base hit」(安打を狙ったバント)、特に左打者が一塁側に引っ張るバントを「drag bunt」と呼ぶ(dragとは引っ張り出す、という意味。打者を一塁に引っ張り出すバント、ということだ)。「ランニングホームラン」は「inside-the-park homer」(場内ホームラン)だが、これなどは日本の用語の方が適切のような気がする。
他にも、野球用語には和製の英語がやたら多い。多くは、あまり一般人が知らない単語の入っているものを、日本人が単純な英語に置き換えて覚えたのだろう。ホームベースは「home plate(単にplateと呼ぶ場合がほとんど)、トップバッターは「leadoff hitter」、「フォアボール」は単に「walk(歩く)」で、「デッドボール」も、死球などというおどろおどろしさはまるでなく、「hit-by-pitch」(投球によるヒット)である。いずれも、英語になれていない時代の日本人にはなじみが薄い英単語であり、日本人の感覚に合う、わかりやすい(あくまで日本人にとって、だが)言葉が選ばれた。
ところで、「ゴロ」という用語、これは果たして英語なのか、日本語なのか。敵性語の言い換えを命令してきた軍部も、これには首をひねったらしい。
「ゴロゴロ転がる球だからゴロ」
とすれば日本語だし、
「英語のgrounderが訛ってゴロになった」
という語源説をとれば英語である。
結局、この「ゴロ」の語源はいまだにどちらとも決め手がないまま現在に至っている。
野球と英語と言えば長島茂雄元監督は、「必要は発明のマザー」と言ってみたり、「“Ilive in TOKYO”を過去形にしなさい」という試験問題に「“I live in EDO”」と答えたりという独特の言語感覚の持ち主だが、昔の野球界には似たような豪傑がたくさんいたものとみえる。

『野球用語(和製英語・カタカナ英語)』
http://homepage1.nifty.com/Liberty/eigo2/h6.htm

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