国語

漱石、イギリス人を皮肉る

2014年4月24日 19:55

18世紀の英語辞書編者に、サミュエル・ジョンソンという博士がいた。この人は、日ごろからスコットランド人をからかっており、自ら編さんした辞書の【OATS】(オーツ麦)の項に、「イングランドでは馬に与えているが、スコットランドでは人間が食べている穀物」と記した。ところが、その辞書が編さんされた100年後に夏目漱石がロンドンに留学すると、食生活が変わり、イギリス人たちの多くがオーツ麦を使った「ポリッジ」という一種のお粥を朝食に食べていたのである。漱石はこれを見て、日本の友人に「さてはイギリス人がすべて馬になったらしい」と書いた手紙を送った。漱石は官費留学でイギリスに渡ったが、帰国後に「尤も(もっとも)不愉快の二年なり」と自身が著わした「文学論」の序文で語っているようにイギリスの生活には馴染めなかったようだ。先の皮肉には当時の漱石の複雑な心境が反映されているのかもしれない。

(文学論:1903年帰国した漱石が帝国大学で行った講義を基にまとめた文学論集。その序で、当時の西洋文明の中心イギリスでの悪戦苦闘を語っている。)

「エン麦」は馬のエサか人間の主食か――辞書の個性」
「イギリス国際結婚あんなことこんなこと スコットランドの朝食ポリッジ」
近代デジタルライブラリー「夏目漱石・文学論」9コマを参照

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